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048 家族の絆

last update Terakhir Diperbarui: 2025-07-01 17:00:58

「先ほどはすまなかったね」

 池の前の喫煙所で、直希と冬馬が肩を並べて煙草を吸っていた。

 正確に言えばもう一人、直希の祖父、栄太郎も立っていた。

 * * *

「新藤直希くん。君の気持ちは理解した。娘の気持ちもね……それでだ。どうだろう、少し二人で話がしたいのだが」

 明日香が落ち着いたタイミングで、冬馬がそう切り出した。

「分かりました。冬馬さんはお煙草、吸われますか? よければ庭で話しましょう」

 そう言って直希が、冬馬を連れて玄関へと向かった。その時生田が、

「直希くん。私も付き合わせてもらえるかね」

 そう言った。しかしそこに、栄太郎が割って入った。

「いや、生田さん。直希は私の孫だ。私に任せてくれんかね」

「新藤さん……いや、あんたが出たら、それこそ駄目だろう」

「大丈夫だよ。私もいい歳なんだ。若い頃のような無茶はしないさ」

「あなたが出ていくとなると、冬馬という男が……心配なんだが」

「無茶はせんから安心してくれ。あんたなら分かるだろ」

「あおい荘で傷害事件、なんてことには……ならないとは思うが、くれぐれも自重してくださいよ」

「ああ、分かってる」

 栄太郎がそう言って微笑み、二人の後に続く。

 その後姿を見つめながらため息をつく生田に、あおいと菜乃花が尋ねた。

「あの、その……栄太郎さん、大丈夫なんでしょうか」

「ああ、菜乃花くん……いや、どちらかと言うと、明日香くんの親父さんの方が心配なんだが」

「生田さん生田さん、それってどういうことですか」

「あ、いや……」

「二人共、栄太郎おじさんなら大丈夫よ」

「つぐみさん? どうして分かるんですか」

「栄太郎おじさん

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